CVCの設立において、人材構成や組織体制は非常に重要なポイントです。2024年7月2日に開催された日本最大規模のCVC特化型イベント「JAPAN CVC SUMMIT」では、「CVCに求められる人材とは」をテーマに、パラマウントベッド株式会社の瀧澤康平氏と東芝テック株式会社の石井達也氏が登壇しました。彼らはCVCに参画した経緯や現在の業務、今後のキャリアについて語り、CVCで求められる人物像を探りました。モデレーターは元DNX Venturesの中垣徹二郎氏が務めました。
中垣徹二郎氏(以下、中垣):私は30年以上ベンチャーキャピタリストとして活動し、直近ではDNX Venturesで事業会社のCVC立ち上げを支援してきました。CVCというポジションには特有の難しさがあります。スタートアップ、事業部、経営陣という三者のバランスを取りながら、成果がすぐに出ない中で活動するのは簡単ではありません。今回はCVCでリーダーとして活躍するお二人をお招きし、CVCに求められる役割や人物像について考えていきます。まずは自己紹介をお願いします。
瀧澤康平氏(以下、瀧澤):私はパラマウントベッド株式会社でCVCを担当しています。2007年に入社後、病院営業を経て2022年に経営企画部に異動し、SBIインベストメント株式会社と共同でCVCを立ち上げました。
石井達也氏(以下、石井):私は東芝テック株式会社でCVCの投資案件を担当しています。元々はカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社でオープンイノベーションに携わっていましたが、縁あって東芝テックに移りました。
中垣:お二人は異なる背景を持ちながらCVCに参画されています。それぞれ、CVCでどのような課題を感じ、それをどう乗り越えてきたか教えてください。
瀧澤:CVCに関する知識も経験もない状態で始めたので、社内に相談できる人がいませんでした。打開できたのは、社外の専門家に助言を求めたことです。社内の評価体制や研修制度について悩んでいた際、J.フロント リテイリング株式会社のCVCを立ち上げた下垣さんに相談し、その助言を基に社内でのコミュニケーションを進めました。
石井:社内での理解を得るのが難しいのはCVCで共通の課題です。投資の成果が数年後にしか出ないため、その価値を理解してもらうのは難しいです。また、スタートアップからも「何ができるのか」と問われることが多く、その期待に応えることが求められます。
中垣:石井さんは、周囲の理解を得られない中で、どのようにして投資実績を増やしてきたのですか。
石井:まずは、投資の焦点を事業シナジーから財務リターンへと寄せました。財務リターンが得られれば、経営陣も成果を実感しやすくなります。実際、レイターステージのスタートアップが上場したことで、経営陣もCVC活動に前向きになりました。
中垣:テクニカルな工夫が成功に繋がったのですね。瀧澤さんは、投資活動でどのようなことを意識してきましたか。
瀧澤:スタートアップ側の期待値調整を重視しました。当社ができることとできないことをはっきり伝えるよう心がけ、それがリスクを分散する結果にもつながりました。
中垣:CVCは中長期計画よりもさらに先を見据える役割を担っています。その難しさを乗り越えるためのポイントについて教えてください。
石井:社長とのコミュニケーションを重視しています。CVC活動では、社長と密にコミュニケーションを取ることで、企業の方向性を具体化していくことが重要です。
瀧澤:当社も社長とのコミュニケーションは取りやすいですが、社外イベントでの登壇をお願いする際には、社長の強みを引き出すことが大切だと感じています。
中垣:一方、社長以外の経営陣や社員とのコミュニケーションについてはどうですか。CVCに対する反感や嫉妬があるのではないかと推測しますが。
石井:確かに「社長付きの人間」と見なされることがありますが、今後は個別のアプローチでコミュニケーションを取り、過半数の支持を得られるよう努めていきたいと思います。
瀧澤:私は各事業部長とのコミュニケーションを大切にし、日々の接触を通じて理解を深めるよう努めています。
中垣:CVCというキャリアは企業内の既定路線から外れていますが、今後のキャリアについてどう考えていますか。
瀧澤:人事異動がある以上、キャリアプランを立てるのは難しいですが、当面はCVC活動を会社として持続できる体制づくりに注力したいと考えています。
石井:CVC活動を強化することで日本の未来に貢献できると信じています。今後はCVC同士が連携し、より多くのイノベーションを迅速に生み出すことが重要です。共におもしろい未来を創りましょう。
中垣:CVC担当者としての活動やキャリア観について貴重なお話を伺えました。本日はありがとうございました。
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