イノベーションが生まれ育つ現場に主体的に関われるのがCVCキャピタリスト。

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インタビュー
山下 敬太

博報堂DYベンチャーズ


1987年生まれ。大学在学中にベンチャーを起業、ベンチャーキャピタルからの資金調達と約2年の事業経験を経て、卒業後にインターネット系大手事業会社2社で、事業開発や投資・M&A、コーポレートの業務に従事。

2017年より、フィンテック・Web3領域の新会社(暗号資産交換業)設立に参画。ビジネスディベロップメントやコーポレートの責任者を務める。

現在は、博報堂DYホールディングスのCVCである博報堂DYベンチャーズ(HDYV)にて、マネージャーとして、ベンチャー投資実務、投資先の支援、グループ各社との事業連携を手がける。

始まりは「自らビジネスをやりたい」という思い

-山下さんは、学生時代の起業から、インターネット系メガベンチャーで事業開発、M&Aなど様々な経験をされてこられています。それに至る変遷について教えていただけますか。

私は、両親は公務員でしたし、祖父母は事業をやっていたものの町工場でしたので、これというきっかけは思いつかないのですが、昔から新しいビジネスに興味があり、いつかは自らやりたいという気持ちがありました。

その背景としては、高校生の時、ライブドアの堀江貴文さんが注目されてテレビに出ていた時期であり、「ベンチャーってかっこいい!」と思える一つのロールモデルになっていたという、世相はあったかも知れません。また、サイバーエージェントの創業者・社長の藤田晋さんが福井県の鯖江市のご出身なのですが、私の地元は隣の石川県ということもあり、インターネットの時代に登場して最年少で上場した起業家という成功物語から地元の有名人で、それもあって、更に親近感と憧れを持っていました。

あるとき、藤田さんのブログに、「(普段は社内でやっている)新規事業コンテストを公募でやります。学生も可」と告知されていたのを見て、考えていたビジネスプランを思い切って応募してみたのです。2005年、当時17歳の地方の高校生が、見様見真似でパワーポイントに説明をまとめ、事業計画の数値をエクセルで作成し、学校のプリンタで印刷して、渋谷にあるサイバーエージェントに郵送しました。今思えば、完全に怪文書です...。

しかしながら、多くの応募があった中でも「高校生が送ってきた」というのが目を引いたようで「渋谷で話しませんか。航空券は送ります」と電話をいただき、午後に学校を抜け出し、飛行機で東京へ飛びました。

-すごい流れですね。東京ではどのような展開が待っていたのでしょうか?

当時、渋谷のマークシティにあった本社を訪ねると、待っていたのは同社の役員の方でした。私が応募した事業は、リアルとオンラインで共通利用できる電子マネーのシステムで、コンビニやドラッグストアでバーコードによるチャージや決済ができ、オンラインでは紐付けたアカウントで決済したり、メールアドレスで送金したりできるというものでした。現在ではQRやバーコードによる店頭での決済が出て当たり前になっていますが、当時(15年前)はまだそういったサービスはなく、その時は「お店でつかうバーコードのポイントカードと、オンラインで送金できる米PayPal(ペイパル)を足したようなイメージ」と話していました。

役員の方に事業の話を聞いていただいている中で、最後に「藤田の時間が30分取れそうだけど、会ってみますか」という流れになり、社長室で藤田さんと話す機会をいただきました。その時に「高校3年生ということだけど、来年からはどうするの?」と言われて、それまでは特に何も考えてなかったのですが、その場の勢いで「東京の大学に行くので、サイバーエージェントで働かせてください」とお願いしたところ、ご快諾いただき、それから半年後、無事に進学することができました。

-実際に働くことになったんですか?

はい。大学と並行したアルバイトとして、サイバーエージェントに約束通り採用いただき、設立したばかりの子会社に出向になりました。創業から2ヶ月のタイミングで、取締役と社員を合わせて4人、アルバイトの私が5人目とまさにベンチャーでした。事業内容は当時盛り上がりつつあった「Web2.0」に特化した、バスマーケティング(ブログやクチコミなどの広告)を専門に扱う代理店です。

基本は週3フルタイム、夏や冬の休み期間は週5で渋谷のオフィスに出社して、広告案件の進行管理や、インフルエンサーネットワーク(発信力のあるブロガーをネットワーク化し、PR案件を渡すサービス)の立ち上げを担当しました。サービスの企画からシステム開発のディレクションまで、任せてもらうことができました。

当時、一緒に働いていた方々は、とにかくバイタリティ溢れており、伸び伸びと夢中に仕事をしている環境でした。その半数以上が現在、スタートアップの経営者や投資家として活躍されており、思えば、上京して右も左もわからないときに、熱量が異常に高い場で、かけがえのない人たちと仕事ができたことは、非常に幸運だったと思います。

大学2年になってしばらくして、別のインターネット企業グループで決済サービスを提供する会社でも並行して働きはじめました。その会社は当時マザーズに上場して2年目でしたが、その後、更なる成長を続け、今や時価総額1兆円を超えるタイミングもある規模に成長しており、この時も環境に恵まれていたのだと思います。業務としては、常務の直下で、ウェブマーケティングを担当し、リスティング広告を月100~300万円ほど回していました。その方がグループ会社のベンチャーキャピタルでパートナーを兼務していたことから、「ベンチャーを起業しないか」という声をかけていただき、結果としてシード投資を受け、2008年に大学3年次になったタイミングで休学し、自ら会社を作りました。

-どういう思いで起業されたのでしょうか?

当初は、自ら会社、ビジネスをとにかくやってみたいという思いがありました。アルバイト先の上司であった方も元々起業家であったという影響もあったと思います。 創業後は、アルバイト時代のつながりから、ウェブマーケティングや制作業務を外注していただくところから始まり、1年かけて自社サービスにシフトしていきました。当時、全盛だったガラケー向けのメディアやサービスを作ったものの、結果としては鳴かず飛ばずでした。受託を減らした中でキャッシュは段々厳しくなっていき、2008年後半からのリーマンショックの前後で景気も減速していたこともあり、最終的に会社を畳み、夢破れるかたちで大学に戻りました。

-その後、新卒としてインターネット系事業会社に入社されるのですね。

就職するときに考えていたのは、起業した会社がマネタイズで失敗したという自覚もあり、儲かる事業の雛型をしっかりと経験しておきたいという点でした。もう一つは、様々なバックグラウンドの方々と働ける環境という点です。私が入社した会社は、2011年頃から積極的に事業規模を拡大し始めたタイミングで、入社を決めたときは300人程度だったのですが、翌年に800人、その翌年に1500人とすごいスピードで拡大している最中で、様々な会社から多様なバックグラウンドを持つ人材が中途として集まっていました。

事業面でも、事業の中核であった自社ゲーム中心のSNSを外部へオープンに開放して、ゲーミングプラットフォームに転換していく時期で、入社後は、プラットフォームのディレクターとして、API/SDKなどの仕様策定やデータ分析を行ったほか、海外を含むビジネスディベロップメントを管轄する部署を経験しました。在籍していた最後の1年半は、投資・インキュベーション事業に移り、医療やシェアリングエコノミーの領域で、スタートアップ3社への投資を担当しました。

-新卒で入社した会社に約5年間、その後転職された会社に約2年間いらっしゃったのですね。

はい。新卒で入社した会社は、ゲームコンテンツを事業の主軸にしていく方向になっていく中で、元々インターネットビジネス全般を見ていきたいという思いを持っていたこともあり、新しい環境に移ることにしました。

転職した会社、同じくメガベンチャーと呼ばれる大手インターネット事業会社で、当時オリジナルのゲームタイトルがヒットしたことで、新規事業へ投資する余裕が生まれたタイミングでした。入社後は経営企画の所属となり、社内の新規事業アイデアを基にどう事業化していくかを考えて実行したり、役員と社員とのスムーズなコミュニケーションのために合宿の企画・実行をしたり。現在の仕事と近いところとして、新規領域に進出するためのM&AやベンチャーキャピタルへのLP出資などの投資業務も担当しました。

-その後、フィンテックベンチャーの立ち上げに関わることになるんですね。

きっかけは、あるスタートアップの経営メンバーと会ったことでした。彼らは、新規事業を作るためのスタートアップスタジオ・エンジニアチームとして、大手インターネット企業にM&Aされたタイミングで、エンジニア中心のチームと事業のプランはあるものの、ビジネスサイドを0→1フェーズで立ち上げられる人材がいない、と。

入社からまだ2年目と新しい仕事にどっぷり浸かっていた時期で、当初は転職することは頭になかったのですが、もともとフィンテック領域への関心は高く、当時のビットコインや仮想通貨の市場の盛り上がりを見て、仮想通貨のウォレットと取引所をセットにしたスマートフォンアプリを提供するというコンセプトに大きな可能性を感じていました。

学生時代から関わっていたWEB2.0の立ち上がりとどこか似たところもありました。結果として、現在はWeb3.0領域として注目されつつあるので、感覚としては正しかったのだと思います。

2017年夏に参画を決めてからは、とにかく忙しかったです。金融庁から仮想通貨交換業(現 暗号資産交換業)のライセンスを取るため手続きや、社内規程・申請書類の整備を主に行いつつ、組織の体制作りも行いました。人材エージェントと連絡を取りながら、2カ月で30-40人と会い、急ピッチで採用を進めつつ、あわせて事業計画の策定、内部統制、マネーロンダリングやセキュリティへの対応など、様々なことを突貫工事で対応しました。

その結果、2017年内に無事に当局(金融庁、財務省 関東財務局)に申請が受理され、2018年2月頃に登録完了する見通しが立ち、何とかビジネスがスタートできる状態に漕ぎ着けました。

-新しい事業、金融庁の認可を必要とする領域で、短期間で準備を整えたのは、すごいですね。

本当に大変でしたが、貴重な経験値を積めた時期だったと思います。これまでに新規事業やコーポレート部門(情報システムや法務等)の実務に関わっていたことも生かせましたし、いままで未知なことでも前向きに取り組んでいたことが役に立ったと思えた瞬間でした。

しかしながら、その後、許認可の取得とサービスの開始を間近に控えた2018年1月に、「コインチェック 仮想通貨流出事件」が発生したのです。暗号資産の価格低迷を招いたことで、同業の取引所は業績が大幅に落ち、業界自体が急激に冷え込んでいったのみならず、金融庁の許認可プロセスがほぼストップし、今後の判断についても更に厳しくなる流れになりました。結果として、親会社グループは、先行していた金融色の強い取引サービス(暗号資産のレバレッジ取引)にフォーカスすることになり、2019年に事業撤退と会社解散(吸収合併)に伴い、私も同社から離れることになりました。

CVCに本気で取り組む姿勢に共感

-その後、博報堂DYベンチャーズ(HDYV)に参画することになるのはどういう経緯だったのでしょうか。

2019年はじめに前職を退職してからは、複数のスタートアップでアドバイザーをしつつ、直近でお会いできていなかったいろいろ人と会い、話をしていました。その中で、以前から面識があった、 HDYVパートナーの漆山に「博報堂DYグループにコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ができた」「内部人材を中心に立ち上げているが、外部からの戦力補強も必要であり、興味があればどうか」と声をかけてもらったのがきっかけです。

大企業のオープンイノベーションには興味があったものの、スタートアップに投資して事業連携を模索するには、中長期的目線で取り組む姿勢が必要で、事業会社がその姿勢を維持することは、過去の経験から難易度が高いと思っていましたが、

「2年間の議論とフィジビリティを経て、CVC設立という結論に至った」

「ファンド(投資事業有限責任組合)を設立して取り組んでおり、投資委員会で意思決定が判断できる体制を整備した」

「CVCの活動が、グループ全体の中期経営計画の中で明確に位置付けられている」

という話を聞き、取り組みに対する本気度や成熟性が感じられました。

博報堂DYグループのような、これまでの歴史やそれに裏付けられた社会的な信用があり、層の厚いリソースを擁する組織の力を借りつつ、自分の経験や価値を発揮できれば、新しい成果や貢献ができるのではと期待が膨らみ、2019年秋に参画しました。実際に、中から見ても短期的な目標にとらわれずに、中長期の目線で勝負できる環境だと感じています。

-大手の総合広告会社である博報堂DYグループ内で、HDYVはどう位置づけられているのでしょうか。

博報堂DYグループが発表している中期経営計画では、これまで築いてきた信頼・実績・顧客接点を活かしつつ、広告会社の枠を超え、企業のマーケティングの進化とイノベーション創出をリードし、生活者や社会全体に新たな価値とインパクトを与え続ける存在になることを基本戦略としています。その取り組みの一つとして外部連携によるイノベーションの加速を掲げており、  5年間で100億円規模のベンチャー投資を行う方針であり、HDYVはこの戦略実行を担う位置づけです。

ちなみに、グループ各社からの事業シナジーを目指した投資(資本業務提携)や純投資は引き続き行っておりますので、我々は中長期の目線で事業グループ全体と事業連携の可能性がある企業への投資の役割を担っています。上場している持株会社(博報堂DYホールディングス)の直下にある組織ということもあり、当社の投資先はグループ全社の事業及びリソースにアクセスすることができる点も強みの一つです。

博報堂DYグループは、もともと新しい価値をクライアントに届けることが仕事ということもあり、グループ内を巻き込んで連携していく中でも、とても好意的に接する社員が多いです。はじめは、外部から入ったら苦労するのではないかと覚悟していたのですが、驚くほどに風通しはよかったです。

-HDYVのパートナーやキャピタリストは、どのような方々なのでしょうか。

現在は、パートナー2名(武田、漆山)と、キャピタリスト6名の計8名です。パートナーは、同じく中途で入社しており、武田は監査法人の会計士出身で、証券会社でのM&Aアドバイザリーを経て、10年以上前に博報堂DYグループに参画して、経営企画としてグループのM&Aや事業戦略を担ってきたものです。漆山は、新卒で大手旅行会社に入り、その後は大手人材サービス会社で自ら事業経験を積み、直近はシード投資を注力領域とするベンチャーキャピタルのパートナーを務めていたものです。

現場の投資担当であるキャピタリストは、博報堂DYグループの出身者と私のような外部採用が半々で構成されています。博報堂DYグループ内からは、ナショナルクライアントを担当していたもの、デジタルマーケティングの企画をしていたもの、グループ会社で新規事業領域のリサーチを担当していたもの、外部からは、外資系証券でリテールや公開引受を担当していたもの、金融系VCでキャピタリストをしていたものなどです。

-スタートアップ向けの支援として、HDYVならではものはありますか。

博報堂DYグループ各社のメンバーから、明確なノウハウ、ケイパビリティがある専門人材を「カタリスト」(触媒)として人選し、HDYVの投資先支援に彼らが協力できる仕組みを用意しています。ベンチャーキャピタル業務に専任でリソースを常に割いているHDYVメンバーに加え、カタリストと意見交換する機会を設けており、直近はクリエイティブやブランディングをテーマにディスカッションを行っています。

-内部の支援制として、ここまで体制を用意しているのは珍しいですね。本業の分野である、広告・マーケティング領域でも支援はあるのでしょうか。

投資先については、現場の投資担当であるキャピタリストが事業モデルや課題などを深く理解しているため、各社に合ったご提案ができるチームをスムーズに設定して動けるという側面はあります。結果的に、コストパフォーマンスの高い施策という形で出資先をご支援できていると思います。

実際に、複数の出資先でTVCMを中心としたマスマーケティングの実績があります。

「リターン」と「シナジー」の両立のためには事業部と連携が不可欠

-投資判断に際してのプロセスや、重視しているポイントについて伺ってもよいでしょうか。

投資の是非を判断するとき大きく3つのポイントがあると思ってます。

1、”投資実行の時期(タイミング)”が適切か?

2、”投資対象となる会社のビジネスモデルや戦略”が優れているか?

3、”価格(バリュエーション)”は妥当か?

独立系や金融系に代表されるベンチャーキャピタルと同じく、候補企業の事業計画を社内で色々シミュレーションをし、自分たちで納得できるケースモデルやストーリーを作り上げるなど、ビジネスに関するDD(デューデリジェンス)は適切に行っています。

もう一つ、コーポレートベンチャーキャピタルとして見ているポイントとして事業シナジーがあります。一定の投資リターンを狙うところはベースにしつつも、博報堂DYグループと連携して、未来を共に創っていくことに期待できるような企業を育てるというミッションがありますので、どのような取り組みが想定できるか、しっかりと議論しています。

短期的なものとしては、例えば、博報堂DYグループの中にある約400社と共同でサービスのパッケージを企画するケースや、実際にスタートアップが提供するソリューションを導入して、博報堂DYグループ各社の経営に生かしているケースなど様々あります。また、中長期的に何か考えられるものがあれば、必ずしも短期で取り組みがなくとも、今後に期待して出資するケースも数多くありますね。

ケースにより異なりますが、最近は検討段階から各事業部門と「今度こういう会社の投資を考えてるが、何かシナジーは見込めるか」という会話をすることもありますし、それに対し「こんなサポートができそう」という意見を受け、スタートアップ側と議論や出資後の具体的なサポートに向け、発展していったケースもあります。

-案件のソーシング活動について伺えますか?

案件のソーシングにあたっては、ネットワーキングを地道にやりながら関係を構築してきました。コーポレートベンチャーキャピタルの立ち上げ当初は、実績も何もないので、様々なベンチャーキャピタルさんに、メンバーから当社のスタンスや投資方針、支援体制などを伝えながら、各社の投資先に関する情報収集を繰り返し、ネットワークを築いてきました。その結果として、投資先をご紹介いただき、共同投資に至っています。スタートアップ系のカンファレンスやピッチイベントに出席したり、協賛したりという取り組みも行っています。

また、投資メンバーや博報堂DYグループ社員の知人やかつての同僚が起業するケースや、それらの方からのご紹介など、俗人的な繋がりによる案件も少なくなく、ここは博報堂DYグループの人材の厚みが生きている部分だと思います。更に最近は、投資先の社長から新たに起業家をご紹介いただくことも増えてきました。投資先から紹介いただけるのは、実際にお付き合いしている中で評価いただいた結果だと思いますので、率直に嬉しいです。

その他として、コーポレートサイトからのお問い合わせなど、スタートアップからの持ち込みもあります。起業家の方々が、どのような事業領域に新たに取り組んでいるのかといったトレンドも肌感覚で掴むことができます。もし、その時点で、まだ事業が立ち上げられていない、投資とフェーズがマッチしないなどの理由で投資実行に至らなかったとしても、次回以降のラウンドでお話を伺っていますし、実際に投資した実績も出ています。

結果、2021年は年間19件の出資を行いました。5年で100億円規模のベンチャー投資を行うと発表していますが、今のところ順調に進捗していると思います。

-その他、キャピタリストとしての業務の中身を教えていただけますでしょうか?

1、新規投資検討

2、既存投資先とのコミュニケーション

3、グループ内とのレポーティングやリエゾン活動

の3つを、

ちょうど三分の一ずつというイメージです。

投資先とのコミュニケーションという面では、取締役会や経営会議などへの参加を積極的に行っています。自分でも約15社担当していますが、月一度の会議へ出席して経営課題について意見交換をする中で、マーケティングへの投資を考えている、成長のために他のベンチャーをM&Aしたいという相談など、何かニーズがあったときには必要な反応ができるように心がけています。次回の資金調達で候補となるVCとの面談をアレンジするなどのアクションを行うこともありますし、投資先によっては、社長から個人的にFacebookのメッセージでご相談いただくこともあります。

-HDYVのコーポレートベンチャーキャピタル活動に関する評価などはいかがでしょうか。

ベンチャーキャピタル業務は、少なくとも投資から2-3年は経たないと成果が出ないので、投資の収益としてリターン評価ができるのはもう少し先になります。

コーポレートベンチャーキャピタルならではのポイントとしては、グループ内への連携において、どのような貢献ができているかということでしょうか。スタートアップの動きや、注目されている事業領域・トレンドについて、情報をフィードバックできているか、投資先と博報堂DYグループ各社のリエゾン役を果たしているか、将来的なM&Aに繋がるようなネットワークを作れているかといった点から、総合的に評価されていると思います。

-キャリアパスという面ではどうでしょうか。人事ローテーション期間の目安などはあるのでしょうか。

HDYVの活動は3年弱で、まだ増員していくフェーズですが、今後、博報堂DYグループの各会社に戻るメンバーが出たときには、出資先と博報堂DYグループやクライアントを連携する役割として活躍し、様々な相乗効果を生み出す流れを作れたらと思っています。

スタートアップの経営陣と寄り添い、仕事ができるポジションですので、事業の知見を高めたり、情報収集・分析の能力を磨いたりといった面で、キャピタリストや新規事業立ち上げの責任者を目指す人にとっては、成長機会やキャリアパスとして魅力的な環境ではないでしょうか。

M&Aによるスタートアップのイグジット(Exit)が増えていくと面白い

-CVCで働く醍醐味や課題など、お感じになっていることはありますか。

私としては、先進的なビジネスが生まれ、育っていく現場に関われていることが一番大きいと思います。事業や企業のバリューアップに貢献するための方法論はベンチャーキャピタルに限りませんが、ビジネスのアイデアが事業モデルとなり、ファイナンスや支援者のサポートを通じて育っていくのを間近で見ることはもちろん、自身も主体的に関わることが出来ることに、この仕事の面白さや醍醐味を感じます。

私は、これまでのメガベンチャーでの経験に加え、コーポレートベンチャーキャピタルの活動を通じて、スタートアップへの支援をより深く捉えられるようになった気と思っています。こういったノウハウや経験は、どうしても属人化する部分ですので、チームメンバーへのナレッジシェアにも課題感を持って取り組みたいと考えています。

-投資先に対するイグジット(Exit)の考え方について教えていただけますか。

イグジット(Exit)、つまり投資回収の方法に関しては、一般的なベンチャーキャピタルが目標とするIPOはもちろん、CVCが属するグループ内の企業がM&Aしたり、スタートアップ同士が経営統合したり、というシナリオもあり得るのではないかと思っています。

国内で、1,000社以上が上場準備をしていると思いますが、年間の上場社数は2021年に137社という状況です。スタートアップ同士がM&Aしてより強い会社として、グローバルを目指していく流れや、新しい事業、イノベーションを生み出していくエコシステムとしてCVCがきっかけとなり、事業会社によるM&Aが加速していくと良いのではないかと思っています。

アメリカのスタートアップでは、M&Aが圧倒的に多い一方で、日本ではIPOが王道、M&Aはネガティブという雰囲気が一般的です。良い事例が出ることで、スタートアップだけでなく、大企業側の意識も変わっていくことを期待しています。

-CVC同士の連携という文脈で考えるといかがでしょうか。

コーポレートベンチャーキャピタルの立ち上げ初期は、強みや投資方針、得意領域が外から見えづらいものですが、時間が経過するとともに、取り組みが可視化されることで、それらがはっきりしてくると思います。当社も事業会社同士、積極的に情報交換をしていくことで、面白いオポチュニティや可能性を導けるのではないかと考えています。

FIRST CVCのコミュニティのような、オープンで前向きな関係は、とても重要だと思いますので、当社も「ギブ アンド ギブ」で関わることで、様々なコーポレートベンチャーキャピタルの方と良い関係を作っていければと思います。

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