コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)とは?

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コラム

CVCの定義と特徴

コーポレート・ベンチャー・キャピタル(以下、CVC)は、事業会社が直接投資や自己資金で形成したファンドやを通じて、社外のスタートアップ企業に投資を行う活動を指します。英語の「Corporate Venture Capital」の頭文字を取って、CVCと略称されることが一般的です。

CVCの最大の特徴は、一般のベンチャー・キャピタル(VC)とは異なる投資目的にあります。VCが主に財務的リターンを追求するのに対し、CVCは以下のような戦略的目的を重視します:

  1. 自社の既存事業とのシナジー創出
  2. 新規事業に役立つ技術の獲得
  3. イノベーションエコシステムへの参画
  4. 将来の M&A 候補の発掘

つまり、CVCは単なる投資活動ではなく、企業の成長戦略や競争力強化の一環として位置づけられているのです。

CVCを実施している企業の特徴

業界分布

CVCは幅広い業界で実施されています。FIRST CVCのCVC SURVEY 2022によると、IT・広告が25%、金融が17%と割合が大きいですが、以下の業界での活動が活発です。

  • 金融業界
  • 情報通信業界
  • エンターテインメント業界
  • 製造業
  • 流通業
  • 建設業

企業規模

CVCを実施している企業の規模は多岐にわたります:

  • 売上1兆円以上の大企業:約30%
  • 売上1,000億円以下の企業:約40%

この数字は、CVCが大企業だけでなく、中堅企業にとっても重要な戦略ツールとなっていることを示しています。

CVC投資の規模と特徴

CVCファンドの規模は、母体企業の規模によって異なりますが、一般的に20億円から80億円程度です。

ただし、下記の運営方式にある二人組合などの場合はファンド規模が明示されていますが、BS投資の場合は投資規模は明示されておりません。こちらの図にある通り、年々CVCの投資件数が増えていることから投資意欲が高まっていることがわかります。(JAPAN CVC SURVEY 2023では616件の投資実績)

CVCの運営方式

CVCの運営方式は、主に以下の3つに分類されます:

  1. 自社のバランスシート投資(BS投資)
    • 自社や子会社から直接スタートアップに投資
    • 柔軟な投資判断が可能だが、専門性に欠ける場合がある
  2. 独立したCVCファンドの設立
    • 専門のファンドマネージャーを雇用
    • より体系的な投資活動が可能
  3. VCとの共同運営(二人組合)
    • 既存VCのノウハウを活用
    • リスク分散と専門性の確保が可能

各企業は、自社の戦略や目的に合わせて最適な運営方式を選択しています。代表的な投資スキームのメリット・デメリットについては下記ページでも解説していますので、参考にしてください。

代表的な投資スキームについて

CVCの主要な目的

CVCの目的は多岐にわたりますが、大きく以下の5つのカテゴリーに分類することができます:

  1. 新規市場開拓
    • 既存ビジネスと関係のない新市場参入
    • 成長が見込まれる市場への参入(特定企業の出資・買収を通じて)
  2. 既存ビジネスの強化と拡大
    • 既存アセットを活用した新事業開発
    • 既存ビジネスの直接的価値向上(コア事業のサービス・機能向上、チャネル開拓等)
    • 既存ビジネスの周辺活性化(コア事業の周辺産業活性化による成長促進)
  3. リスク管理と将来への備え
    • 既存ビジネスを代替する可能性がある技術への投資
    • サステナビリティへの取り組み(持続可能な技術や仕組みを持つ企業への投資)
  4. 情報・知見の獲得
    • 最新動向・ネットワークの獲得(スタートアップの最先端動向把握)
    • 業界トレンドや新技術に関する洞察の獲得
  5. 組織・人材開発
    • 経営者マインドの醸成
    • 事業連携・オープンイノベーションのノウハウ獲得
    • イノベーション文化の醸成

これらの目的は相互に関連しており、多くのCVCは複数の目的を同時に追求しています。企業は自社の戦略や市場環境に応じて、これらの目的の中から重点を置くべき領域を選択し、CVCを設計・運営しています。

CVCの投資目的別事例

CVCの多様な目的を実際の企業の取り組みから理解するため、以下に代表的な事例を紹介します。

1. 既存アセットを活用した新事業

三菱地所の事例:

  • 投資先:spacemotion株式会社(51%株式取得)
  • 目的:事業アセット(自社保有・管理のビル)を活用した新規事業展開
  • 内容:中国で既に市場展開されているエレベーター広告を日本で展開
  • 特徴:既存の不動産アセットに新たな価値を付加し、収益源を多様化

2. 既存ビジネスの代替への備えとDX推進

日本郵政の事例:

  • 投資先:複数(例:Mujin)
  • 目的:
    1. 既存の事業アセット(郵便局、金融窓口、店舗不動産)の競争力補完
    2. 代替技術やDX/GX関連技術への投資
  • 内容:
    • ドローン、AI等の活用技術への投資
    • Mujinとの協業による郵便局の宅配便仕分け作業の自動化
  • 特徴:既存事業のコスト削減と効率化を図りつつ、将来的な事業環境の変化に備える

3. DX推進による業務効率化

ベネッセの事例:

  • 投資先:株式会社ガラパゴス
  • 目的:自社の広告やコンテンツ制作の効率化
  • 内容:AIによるコンテンツ生成自動化技術への投資と事業連携
  • 特徴:コア事業であるコンテンツ制作プロセスのデジタル化による競争力強化

これらの事例は、CVCが単なる金銭的投資を超えて、企業の戦略的目標達成のための重要なツールとなっていることを示しています。各企業は、自社の強みや課題に応じて、CVCを通じて新たな技術やビジネスモデルを取り入れ、既存事業の強化や新規事業の創出を図っています。

まとめ

CVCは、急速に変化するビジネス環境において、企業が外部のイノベーションを取り込み、成長を加速させるための重要なツールとなっています。その戦略的意義は、単なる財務リターンを超えて、企業の長期的な競争力強化に直結しています。今後、より多くの企業がCVCを活用し、オープンイノベーションを推進していくことが予想されます。

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